さて、今回はあらかじめ建築場所は決まっておりましたので、先ずは周辺の色々な場所から計画地を見て回りました。
電車の駅のロータリーに近くで、比較的密度の高い場所に設計しますので、まずは入念に目線の『抜け』のありそうな場所を探しました。
周囲をぐるぐる歩き回り、周辺の建物に登ったりして、状況を立体的に把握しますが、流石にわずかな抜けしか見つけられませんでした。
ですが、かえってコンセプトがぶれにくいとも考えられます。
敷地のポテンシャルを最大限に引き出すために、周囲を見下ろすペントハウス付きの背の高い建物で、かつ地下ガレージ付きの、超豪邸を設計したくなってしまったのですが、かなり非常識な価格になりそうなので、そこはぐっとこらえて、2階建てのプランと3階建てのプランを設計させて頂きました。
インナーガレージ付きの3階建ての設計プラン
ガレージは表に出してコストを抑えた2階建ての設計プラン
プランのパースにある、隣家との間に描いた背の高い石貼りの塀(壁)は、周囲に対するデザインの隔絶もしくは抵抗だったのですが、これは価格がかかり過ぎましたので却下し、2階建て案の細部を少々変更して、ご契約頂き、打ち合わせに入りました。
外壁を140㎜厚の206(ツーバイシックス)壁とし、断熱を補強し、熱交換換気気調システムの特徴を最大限に生かす為、必要な部分以外の窓を無くすことで、コストを抑えながら断熱性能を最大限にしました。
LDKに隣接した和室はオミットし、浴室前のバルコニーや外部の物干し場なども、生活スタイルをあらかじめ確定することにより、プランの合理化を図りましたので、いつもよりは遊びは少なめですが、逆に徹底して洗練されたストイックなシンプルさが目立ちます。
外部に対して閉鎖的な外観は都市型住宅の特徴です。
玄関に入ると最近定番になっている、収納上に置いた照明の間接照明が柔らかく出迎えてくれます。
いつになくやさしい色合いで、シンプルで上質なマテリアルのエントランスから階段へ。
階段を上がりきったところの大きなFIX窓を振り返るとLDKです。
インテリア雑誌さながらのカラープランは、プロによって精密かつ繊細に色彩が調整されています。
ダイニングのチェアはイタリアの建築家、ジオ・ポンティーがデザインした本物の名作椅子です(写真右)
奥様コダワリのステンレストップのキッチン。
奥にはパントリーを備えています。
大きな居間の3連窓は美術館の様に見える様にデザインしました。
LDKは木造の2階に位置しますが、完全フラットでタイル貼りのバルコニーに繋がります。
美しい木目のTVボードは特注です。
LDKのほぼ中央にタイル貼りの壁を作って、設計とインテリアに中心性と重心を持たせる事で安定感を作りました。デティールもヌカリなく、タイルの角は裏面を45度に削って接着してカタマリ感と迫力を演出します。
居間とDKにはそれぞれ用途に合致した間接照明を設計しています。
水廻りの壁に貼られたガラスモザイクタイルのきらめきがエレガントな華やかさを演出します。
洗面の床に貼られた大判のタイルは迫力が有ります。
コンセプトが合理的かつシンプルでストイックな設計で、デティールまでもかなりスッキリ仕上がっていますので、そのままでは尖り過ぎてしまいますが、インテリアのカラーコーディネートがやさしさやきらびやかさを醸し出して絶妙なバランスで成り立っています。
今回はLDKの家具も含めた計画でしたので、ハイクラスなモデルハウスの様な仕上がりになっています。
また、ご夫婦ともに、コダワリの部分には妥協しないが、不必要なものにコストをかけないという明確なビジョンをお持ちでした。
近年、多くのお客様がネットに溢れる玉石混淆の情報に翻弄され、打ち合わせ中に右往左往されていますが、ご主人の情報の取捨選択の判断は驚くほど正確で、『仰る通りです・・・』ばかりでした。
注文住宅の打ち合わせとしては楽なのですが、多少なりとも知識をひけらかしたかった辻井としては、少し物足りなかったです。
ネット社会になって久しいので、小さい頃から多くの情報に触れるのが当たり前になっている若いかたは、情報の取捨選択がうまいかたが多くなっているのかもしれないと感じる ATTIC辻井でした。