さて、ウッドショックの初期で、価格上昇中の難しい時期の計画でした。
ですが、敷地は三角形に近い台形の土地ですので、得意です。
まずは、ご要望をお聞きし、方位と周辺環境や日当たりなどを考慮して、何処に建物を配置するかを何種類かシュミレーションして一番良い配置を探りました。
辻井が得意なシンプルな外観。アプローチの庇をわざと長くとった、機能と実益を兼ねるデザインです。敷地奥へと引き込むアプローチは、独特の『格の違い』を演出します。フットライトのみで照明の重心を下に落とす事で、よりグレード感を上げます。
色々な位置に間取りを置いて(ゾーニングと言います)検討した結果、これしかないという場所を見つけてプランを確定です。
アプローチの天井は最後まで木製にするかを検討しましたが、あえて吹付にしました。
土地の形状から、階段の位置を確定し、最も合理的だと思われる位置に玄関ホールを配置すると、必然的にアプローチが長くなりますので、いっそこれを強調する案をご提案させて頂きました。
寺社仏閣など、格式の高い建築物は、総じてアプローチが長い為、逆に長いアプローチは格式を演出できます。日本人の中にある感性を巧妙に刺激するトリックです。
あえて段差を抑え、広くゆったりした階段が特徴的です。
玄関の自然光は、意図的に反射率の悪いタイルとし、それに対して柔らかくバウンドする光のみが廻る様にあえて光を絞り込んでいます。
LDKの窓の高さや大きさは、これまたトレンドのハイスペックな窓を最も効果的にその目的を果たし、かつ経済的にやさしい大きさと仕様にする為に検討し、答えを出しています。
光を絞り込んだ玄関ホールで靴を脱ぐ動作をしている間に、目を暗いところになじませ、瞳孔を少し開放させた後、LDKに入ってもらう事で、想像より明るいLDKに入って貰えます。
入口脇の少し高い位置に設置したフィックス窓の効果がキッチンの手元まで明るく照らします。
インテリアをより広く見せるには、長手方向を阻害する要因を出来る限り排除することです。
つまり、キッチン、天井のダウンライトなどの器具の並び、フローリングの貼り方向、カップボード、間接照明、ダイニングテーブル等々、可能な限り、目線の伸びる方向に揃えて全てを配置します。
天板の透明感は他社に類を見ないTOTOのキッチン
グレイッシュなインテリアは、今のトレンドの最先端です。カッケー。
ダイニングの後ろに設けたスタディーコーナー。二重カウンターは目を引きませんが、デザインレスな良いデザインで好きです。
インテリアのテイストは少しダルなペールグレーとホワイトを基調にブラックを刺し色とし、モダンなテイストに。グレーは本当に難しい色ですが、美しく仕上がりました。
本物件のお客様もそうですが、最近SNSを利用・・・というか、駆使されているというか、私なんかよりもはるかに上手く使われているかたが多くいらっしゃいます。
お客様は容易に専門知識を得られるようになり、随時アップデートされる無限ともいえるSNSの情報にアクセスする事が出来ます。
その結果お客様はインテリアやデザインテイストなどにも感度が高くなり、明確な好みを主張出来るかたが増えている様に感じます。
私はずっと設計をしてきましたので、そこで培ってきた知識をもとに打合せをしてきたのですが、プロと素人の間で知識の差が年々少なくなってきている気がします。
ですので、これからの住宅設計において、『知識』は必要条件ですが、『知恵』がより重要な要件になってくると改めて感じました。
今回、寝室の奥にWICにも使える書斎を作ったのですが、私の中ではこれ以上ないしっくりといく提案が出来た気がしています。
わけわからないですね、すみません(笑)
鏡に仕込んである照明で照らされている美しい艶消しガラスモザイクタイルは名古屋モザイクというメーカーの少しグレード感のあるもの。壁から出る水栓も高級です。
水廻りも脱衣と洗面を分けるなど、お客様のコダワリが随所に。洗面のタイルが欠品していて、なかなか入らなかったのでヤキモキしました。異なる有る物に変更してもらうのがこの業界の常識なのですが、工程を少し遅らせてなんとか貼ってもらいました。黒いカウンターにクロムの水栓と相まってタイルが美しいので私は大満足です(笑)
ちなみに、写真は撮っていませんが、浴室の鏡が無いのは、インスタで広がった今のトレンドの様です。
階段廻りはすっきりと。隣家が迫るので、窓は控えめに光だけを入れます。
モダンなインテリアが好きなので、つい力んでしまった ATTIC辻井でした。