設計データData

竣 工 2019年 坪 数 27.20坪
場 所 京都市伏見区 工 法 枠組壁工法
種 別 新築

エピソードEpisode

外観

もうかれこれ20年以上前、十代の頃にしていたバイト先の先輩から、娘さんご夫婦をご紹介いただきました。おっさんになった今も、そのかたからは、『つじいちゃん!』と呼ばれています(笑)

当時バイト先では一生懸命働いていたのですが、真面目すぎた私をあまり快く思わない人に嫌がらせをされたりもしました。そのころはこんな事になるとは思いもしませんでしたが、真面目に生きてきて良かったなと、少し思います(笑)

今回はご契約済の土地にプランをするところからお手伝いさせて頂きました。

土地のご契約の際に、どこかの誰かが(適当に)書いた建売の(凡庸な)プランでご契約されていましたので、きちんとヒアリングしてプランをしてみると、足りない部分が少し見つかりました。

さらに、建売然とした売り手主導の最低限の仕様を、正常な仕様にすると金額が上がってきますので、この場所での計画自体が不可能になり、土地を変更して再プランをせざるを得なくなってしまいました。(本当の事を言ってすみません。)

外観

土地ご契約の解除にあたり、少なくない追い金が発生しましたので、不動産業者とのお話に同席させて頂きました。

最後に『またなにかありましたらよろしく!』と不動産業者が言った時に、流石の私も『お客様に正確に理解出来るように契約書の内容説明をきちんと出来ていない中、追い金まで徴収しておいて、『またよろしく』したいのであれば、少しまけても良いと思いませんか?』と問いただしました。

『そうですね』・・・やって。

どうなんでしょう・・・。

結果的には物件を掴まされなくて済んだのでかえって良かったので、改めて土地探しからスタートです。いつもの如く土地の選択には妥協をしませんので、多少時間がかかりましたが、今回もバッチリ見つけました。

土地
予算は合いますが、条件が合いませんでした。

学区、交通事情も良い閑静な住宅街。南向け雛壇で道路と少し高低差の有る土地です。

高低差は、1階にLDKを据える場合は日当たりを確保しながら通行人の視線をカット出来ますので、予算的問題を除けばベストな立地条件です。

土地
車との対比で、1.4m~2m程度の高低差が有る事がわかります。

コンセプトConcept

この土地は私の実家の近くだった為、近所を何度も通った事が有りましたので、土地勘もあったためか、プランは難しくありませんでした。

駐車スペースを確保する為に、既存の擁壁を解体する必要が有るのですが、すぐ横に隣家の駐車スペースがありました。

狭すぎて足場が組めないので、木材とベニヤで可変養生システムを設計しましたが、台風の関係で業者はみんな忙しく、お金にならないどうせ壊すものをだれも施工してくれないので、嫌々自分で施工しました。

しかし、やり始めるとなかなか楽しかったから不思議です(笑)

基礎
隣の車に小石が『当たらなければどうという事は無い』様にしなければいけません。

擁壁は通常土木建築業者に施工してもらうのですが、大きな費用がかかってしまいます。

そこで、監理と設計の出来るATTICなので、住宅の基礎業者に安価にベースを施工してもらい、外構の業者でCP型枠と言う擁壁ブロックを施工してもらって費用を圧縮する事にしました。出来上がると普通のブロックにみえてしまいますが、強度は全く異なります。

基礎
可変養生システムが変形しながら稼働しています。

さて玄関に入るとシューズクロークが有ります。

シューズクローク

段差は奥まで続いていますが、両折れ戸の片方を空中でぶら下げてやるとシンプルに納められますので奇麗です。

半対面の壁にはお客様が大切に保存されていた某有名動物(ねずみ)のタイルを張ってライトアップしています。

某有名動物
(この会社は色々うるさいらしく、パテント関係の問題がおこると怖いのでモザイクをかけておきますが、詳しく知りたい方は個別にメールを頂けますでしょうか。)

LDKは広さ感を出すために、工夫します。

床、間接照明、ダウンライトまで、一定の方向にすることで伸びやかなラインを強調しています。

高身長なご主人の事を考慮して間接照明は天井を下げないタイプにしています。

某有名動物

キッチンの横の細かい部分にも間接照明が入っています。

間接照明

キッチンの横には広い目の洗面脱衣を備えて収納を充実し、家事を楽に出来るように工夫しています。

洗面脱衣

さらにちょっとした洗濯物は収納式のランドリーハンガーで干せるようにしました。

ランドリーハンガー
ここからロープが2.7m伸びて、反対側の壁のフックに接続します。

階段室には大きな窓を設置して明るさを確保しましたが、透明にすると隣家の壁しか見えないので、型ガラスのフィックス窓にしています。

フィックス窓

廊下や階段室は、天井には照明を設けず、フットライトのみの配灯とし、意図的に照度を絞ります。

廊下や階段室

主寝室は北側になりますので、南向き雛段の土地は一段高くなった隣家から見下ろされる事になります。

主寝室

そこで正面を壁にした出窓を作り、両サイドだけに窓を作る事で、通風と採光とプライバシーが両立出来る寝室が作ることが出来ます。

主寝室出窓

辻井は何故か普通の出窓よりもこちらが好きです。

主寝室

ATTICでは珍しく大阪ガスの太陽光発電とエネファーム(ガス発電)を採用しています。

エネファーム

道路と敷地に高低差が有る場合、ギラギラした太陽光パネルも見えにくくなり、スッキリしたデザインの邪魔をしませんので辻井的には嬉しいです。

スッキリしたと言えば、今回外観デザインで初の試みをしていますがお気づきでしょうか。

外観デザイン

厚み3㎜のアルミ材を仕込み、外壁に力線を入れる事で、美しい形の矩型(長方形)をハッキリ認識出来る様にすることで、直方体が積まれた様に見える様に演出しています。

さらに、正面の窓はそれらを邪魔しない様に縦長にデザインされていますので、一番目立つ正面の壁の比率が美しい黄金比を描きます。

ATTICの家が廻りの家と少し違って見えるのは、少し考えてあるからです。

注文住宅は出来上がるまでに様々なドラマが有ります。

良いお話ばかりではない事も多々ありますが、常に深く考えて選択する事で最良の結果を出すことが出来ると思います。

建築において大抵の場合、一番面倒だなと思える事が最良な場合が多いのですが、これをストイックに実行し続ける事でのみお客様に気に入って住んで頂ける家を設計出来ると思っています。

今回も100点のアンケートを頂きましたが、その度に幸せを感じている辻井でした。

  • クレーン今回、地盤補強が必要だったのですが、高低差が有る場合は工事車両をクレーンで吊るのだそうです。あまり笑えませんが、面白い絵なのであえて載せておきます。
  • ダイニングテーブルの横の窓ダイニングテーブルの横の窓は、巾をテーブルの大きさに合わせています。隣の緑を借景しましたが、後日隣家は何故か高い塀を作っておられましたので、この風景はこれが見納めです。すみません、予測不能でした。
  • 住まう今回、辻井の自邸に続いて大阪ガスの機関紙『住まう』に掲載していただきました。
  • 住まう